リュミエール兄弟がシネマトグラフを発明し、人類が動く映像を記録するという術を得たのが19世紀末。20世紀はその幕開けとともに動く映像として歴史を記録することが可能になった最初の世紀となった。 映像というメディアが、やがて発達・浸透していくなかで歴史に大きくかかわり、世界を動かす程に巨大な存在となっていく過程を含め、「映像の世紀」と呼ぶにふさわしい20世紀の記録映像を世界30ヶ国以上、約200ヶ所の資料館から発掘・収集して構成された本シリーズ。 第4集では、20世紀、最も巧みに映像を利用して人々の心をとらえた権力者、それはヒトラー率いるナチス・ドイツの狂気の道を、日本の姿を折り込みながら映像をとおして伝えていく。(井上新八)
ヒトラー信仰。
ヒトラーの演説が圧巻でした。まさに神のようでした。圧倒的な迫力と説得力、そして魅力を放っていました。
ヒトラーの自己プロデュース力は凄いですね。自身を神に選ばれた救世主のように、民衆の目にうつるよう工夫して演出していたんだと思います。
ヒトラーは政治家というよりタレント、もしくは宗教の教祖のようですね。民衆に夢を見させて、とりあえず何が何でも自分についてくるよう洗脳してしまう能力に長けていました。
ヒトラーの夢見たユートピアを実現するために、ヒトラーの信者たちは理性や人間性を失していったのです。
ヒトラー率いるナチスドイツとは、暴走したカルト宗教団体のようなものだったのではないでしょうか。
狂熱に浮かされたドイツ国民たちは、ヒトラーの信仰のために暴走し、そして悲惨な破滅をむかえたのです。
アドルフ・ヒトラーの台頭と戦争
リュミエール兄弟がシネマトグラフを発明し、人類が動く映像を記録するという術を得たのが19世紀末。テレビ放送開始まで、映像は映画によるものである。えいぞうによって映し出されたものは、人間の楽しい営みではなく、憎しみ、悲しみが多い。第一次世界大戦、ドイツの物価が1兆倍になったこと、ロシア革命、ヒトラーに代表されるヒトラーの台頭、第二次世界大戦、敗戦、戦後の復興、大恐慌などである。20世紀は戦争と革命の世紀であった。21世紀も混沌としていることを考えれば、歴史は繰り返すのかもしれない。私たちがつくり出す「21世紀映像の記録」は、後世の評価はどうなるであろうか。
人を盲目にさせるもの
1930年代のドイツは、ヒトラーのような人物を最も欲していたのではないだろうか。ベルサイユ体制によって、国家としてのプライドは剥ぎ取られ、国民の経済は危機的な状態追い込まれていた。そして1929年のニューヨーク発の世界恐慌は当時のドイツを更に圧迫していた。 相次ぐ銀行の倒産、そして失業者の増大、当時のドイツ人はさぞ祖国をそして人民を絶望のどん底に陥れた、ベルサイユ体制に反発を覚えたことであろう。そして、ベルサイユ条約を締結したドイツ・ワイマール政府を恨んだことであろう。 この様な状態に立たされたとき、カリスマ的指導者を求めようとするのは自然な流れではないだろうか。ドイツ人としての誇りを取り戻してくれる人物、食卓にパンを運んでくれる人物、それが当時のドイツ人にとってのヒトラーだったのではないだろうか。 ミュンヘン一揆失敗の後、獄中の中で合法的な方法で政権を獲得することを決意したヒトラーはその後、民衆の心を捉えてその決意を現実のものにした。ヒトラーはまさに、正しいときに正しい場所に生まれて来た人物だった。 しかし、人々は彼のそのカリスマ性によって、彼の本性―――民族に以後「原罪」を背負わす事となる本性を見落としていた。いや、見えていて見えない振りをしていたのかもしれない。人は時として希望を膨らますが為に盲目となる。これはいつの時代にもあるのではないだろうか。 身近な例として、日本の戦後「平和主義」がある。戦前の軍国主義に対する反発から出てくるものなのであろう。この反発は、国家の安全保障を「平和を愛する諸国民の公正と信義」などという国益を重視する国際政治の舞台において存在すら怪しい原理に委ねようとするイデオロギーを作り出してしまった。「平和主義」の名の下に現実的な安全保障論が「軍国主義的」という烙印を押されてしまうようになった。 我々日本人は戦後の「平和主義」が、日本が戦争に巻き込まれてさえいなければ平和という一国平和主義、異民族による支配であれ命さえ助かれば平和という民族の誇りを捨てる去る平和主義であることを見つめなければならない。 「戦後平和主義」の本性を見て見ぬ振りをしていると、ヒトラーの本性を見て見ぬ振りをしたドイツ民族と同じような不幸を日本人は経験することになるであろう。我々一人一人が、国家の安全保障について過去の呪縛を振りほどき真剣に考えなければ、やがて半世紀前の不幸が繰り返されるかもしれない。
NHKエンタープライズ
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